9/27 デイケアセンターにおける交流会・意見交換会
1.施設設備・概要
1972 年に設立。ウエストバンクーバー市が運営する55 歳以上の方が利用できる会員制のアクティビティセンター。様々なアクティビティ活動をするためのスペースが何室もあり、その他にもカフェスペース、寄付された雑貨等が販売されている売店や花屋等もある。
2.施設利用対象者
55 歳以上でカナダに住所がある人なら誰でも利用できる。年会費38 ドル。各アクティビティに参加するには原則事前予約が必要で個々に参加費も設定されている。
3.施設での取り組み内容(アクティビティ)
アクティビティは月間予定が組まれており、事前予約を行うシステムとなっている。当日見学できたクラスとして、手芸ルーム、木工教室、フライトシュミレーション、テーブルゲーム、スコティッシュダンス、管楽器演奏、ビリヤード、アート作品作り等。その他にもフレイル予防のクラスや文化的趣味活動やスポーツクラス、旅行など多種多様なアクティビティグループがこのセンターを中心に行われている。
4.所感
平日の日中視察を行ったが、非常に多くの方が施設やカフェスペースを利用され、地域に開かれている施設であることがよく分かった。参加しているシニア世代の方々はみんな表情明るく、そこに来ることをとても楽しみにしている様子が伝わってきた。実際に、アクティビティの参加者からは「アクティビティに参加することだけではなく、そこの参加者と交流しながら、アイディアを出し合い、協力しあい、共感しあうことが一番の楽しみである」という話を聞かせていただいた。
また、日本と比較して非常に男性利用者が多く、当日利用している男性の割合は3割~4割はいたように感じた。当日見学させていただいたアクティビティの大半は男女混合で行われており、カフェのテーブルを見ても、男女で食事されているテーブルが多く文化の違いを感じた。そして、なによりも驚きなのは、運営資金の内訳に占める寄付の多い事と、この施設の事務員及びカフェの調理員以外のほとんどがボランティアであるという事だ。寄付が多いのは、この地域に裕福な世帯が多いことが理由の一つであると思われるが、ボランティアや寄付といった“ 奉仕の精神” は地域性というよりは、カナダの国民性であることを感じさせられた。
9/30 食事配達センター 配達・調理体験
1.施設・事業概要
1969 年にキリスト教ボランティア団体が主体になり設立。事業内容は、高齢者を対象としたランチプログラム。高齢者の栄養と社会的ニーズを満たすために特別に設計された唯一の連邦政府が支援するプログラムである。連邦政府からの資金援助や寄付金を元に運営し、ミールズ オン ホイールズ全体で年間約100 万食を提供。50 年間で約3,800万食の提供実績がある。団体としては、人々にセンターに来て食事を召し上がっていたが、センターまで行けない高齢者も多くいるので宅配サービスを行っている。サービスは所得に関係なく利用することが可能で、1 食7 $で食事を提供し、支払いが困難な方については無償で提供する場合もある。
2.スタッフ構成
視察を行ったビーバートンのセンターでは被雇用者3 名、ボランティア約300 名が在籍し、ボランティアの人数は全米3 位の多さを誇る。全体では約8,000 人が登録し、年齢層は20 代から80 代と幅広く、高齢者も多く参加されている。
ボランティア自身の生活スタイルに合わせて運営に協力し、食事の調理・盛り付け・配膳・弁当の宅配などを担っていた。
3.宅配ボランティア体験を行っての所感
センターで作った弁当をアイスボックスに詰め込み、伝票を持参してセンター近辺の方を中心に10 人の利用者宅へ配達していた。一人ひとり弁当の内容が異なるため、伝票を確認しながら間違いのないように自宅へ届ける。不在の方には電話をかけ、安否確認も行っていた。宅配に使用している車や携帯電話はボランアティア自身の物を使用し、ガソリン代や電話代もご自身で負担しているということであった。今回10 軒の宅配体験を行い、一軒家・アパート・トレーラーハウスなど様々な住宅を訪問することができ、全米で移住に適した小都市ビーバートンの一部分を垣間見ることができて良かった。また、訪問した際に短時間ではあるが高齢者とコミュニケーションを図ることで利用者の健康確認や孤独感の解消を兼ねている点が素晴らしいと感じた。
10/1 大型シニアケア施設 見学及び入居者交流
1.施設概要
1967 年以来ポーランド地区の高齢者をサポートしている。ミッションは常に豊かな生活を送ることができる非営利目的の高齢者居住地区を作り出し、維持すること。変わり続ける高齢者のニーズを知り、精神的で社会的な機会のある活動的なライフスタイルを推奨している。多様な食事のプログラムや幅広い健康サービス、個別のケアを含むハイクオリティなサービスを提供することに力を入れている。入居者の基準は年齢のみで62 歳以上。軽度者から重度者までの支援を行っており、終身的な介護支援を受けることができる。居室は182 室で35 種以上の間取りがあり、スタジオや寝室(1 部屋もしくは2 部屋)、書斎つきの部屋もある。介護付きが36 室。
2.健康増進のためのプログラム
健康を促進するための活動や設備が充実していた。フィットネスセンター、ウエイトや高齢者向けの筋力強化マシン、エクササイズのクラス、水中エアロビクス、気功、ヨガ、鍼や理学、作業、言語療法などがあり、プール、ジムは24 時間いつでも利用可能となっている。その他、様々な趣味活動( 図書館、ヘアーサロン、ギフトショップ、木工、卓球、6 ホールのゴルフのティーパットができるグリーンなど)が出来る設備も整い、居住者が主体となって様々なアクティビティな活動を行っていた。
3.所 感
ホラディパークプラザはポートランドの中心地にあり、非常に立地条件が良かった。それに応じ入居費用は非常に高く、入居できるのは高収入者に限られる現状があった。しかし、その中でも需要は大きく待機者も多く同様の施設を複数運営しているとあった。居室以外の設備も充実し、プールからジムまで様々あった。また、アクティビティも充実しており、ボランティアや生涯教育、音楽、スポーツなどの趣味活動のプログラムに参加する事が出来た。また、食事に関して、居室にキッチンもあるが共有のダイニングがあり、地産の食材を使った健康志向の料理が食べられる食通ダイニングであった。このハイクオリティなサービスの提供がホラディパークプラザのミッションと利用者ニーズに合致し、高い需要が得られている理由であると感じた。
居住者が受ける介護サービスも充実しており、施設内での終身介護を受けることができ、将来に向けて安心して生活する事が可能であった。ただし、階においては、サービス可能な範囲があり、必要に応じて居室の変更は必要とのこと。専門のチームが家族・主治医・法的な代理人と相談しながら本人の状況に適切なサービスの種類を検討、提供している。居住者との交流の中でも、ここでの生活に満足しており将来に向けた安心感が強いことがこの施設の魅力であると話されていた。
総合所感
この海外研修・調査事業において、北米地区におけるボランティアのマンパワーの大きさと力強さ、そしてシニア世代の第2の人生の送り方に大きく感銘を受けた。まずボランティアについては、学生における単位取得となったり、奨学金の取得要件となったりしていた。きっかけはどうであれ、若い世代の身近に福祉があるシステムが素晴らしかった。そういった積み重ねがあるからこそ、定年後のシニア世代の多くの方がボランティアに参加していた。その中で新たな人間関係を構
築し、お互いに支え合いながら生活を送っていた。日本においてありがちな、定年後社会から孤立してしまうような人は多くはいない。このようにシニア世代でも新たな夢や希望を持ちながら、地域において活躍し続ける人達が私の眼には非常に眩しく映った。日本においても地域共生社会の推進を図るなかで、シニア世代やボランティアのマンパワーは不可欠であり、それらを生み出す仕組み作りはとても参考になった。この経験を自分の糧とするのに限らず、所属組織やその他の関係
団体にも広く知らせ、地域福祉の発展に今後尽力していきたい。
この研修調査が学び多く、私の人生において大きな宝となったことについて、この機会を与えて下さった関係者の皆様に心より感謝申し上げたい。
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